今でこそアフリカはダイヤモンドの産地として有名ですが、かつてはダイヤモンドが採れる地域と言えばインドやブラジルでした。
アフリカでダイヤモンドの採掘が行われるようになったのは意外と遅く、19世紀に入ってからです。
ある日、南アフリカの都市、ケープタウンに住む15歳の少年、エラスムス・ジェイコブスがきらきら光る美しい小石を見つけました。
彼はそれを拾って妹にあげ、妹は遊び道具として使っていました。
それを見かけた友人のファン・ニーケルは石を貸してほしいと頼み、石でガラスを引っ掻くとガラスには傷ができました。
興味を持ったらしいニーケルは石を売ってほしいと頼み、ただの小石1つでお金を取るのも馬鹿らしいからと、タダで石を手に入れることができました。
しかしニーケルにとって、これはただの綺麗な石ではありませんでした。彼はこれがダイヤモンドではないかと考えていたのです。
ニーケルはダイヤについてほとんど何も知りませんでした。ただ、ダイヤはとても硬いと聞いていたのみです。
光る小石がガラスを気付付けたことで、そんなに硬いならダイヤかもしれないと思ったのです。
石を手に入れたニーケルは上機嫌でした。しかし、時間がたつにつれ心配が頭をもたげてきます。
この石は本当にダイヤなのだろうか?
本物のダイヤが地面に転がっていて、子供の遊び道具になっていたのだろうか?
そんなことがあり得るのか?
結局、ニーケルは光る小石がただの綺麗な石であることが判明する前に売ってしまおうと考え、知り合いの商人、ジャック・オ・ライリーに数ポンドで売りました。
実はただの石かもしれないものがお金になったのですから、ニーケルは満足だったかもしれません。
しかしライリーが鉱物学者に鑑定を依頼した結果、この石は正真正銘、本物のダイヤモンドだと認められたのです。
その後はイギリス王室専属の宝石商のもとにわたり、正式にダイヤモンドとして発表されることになりました。
この石はのちにユリーカ・ダイヤモンドと呼ばれることになります。
しかしユリーカ・ダイヤモンドが見つかってからも、アフリカにダイヤモンドの鉱床があるとは、だれも信じませんでした。
アフリカの土壌が、それまで見つかっていた鉱床とは全く異なっていたからです。
誰かがケープタウンに注目させるために、わざと原石を埋めたのだとさえ言われました。
しかしその考えも大きく変わる時が来ます。
再びアフリカでダイヤが発見されたのです。しかも大きさは83.5カラットもありました。
この石は後に南アフリカの星、スター・オブ・サウスアフリカと呼ばれることになります。
南アフリカの星が発見されて以降、アフリカにはたくさんの人々が押し寄せるようになりました。
巨大なダイヤモンドを掘り当てて、一攫千金を目指す人たちです。彼らは来る日も来る日も、地面を掘り進んでダイヤを探しました。
今のように採掘用の機械などありません。すべて手作業です。
しかしそれでも、辛いだけの作業ではありませんでした。
シャベルを地面に突き刺すごとに、人生を変える、巨大で美しいダイヤの幻影を見ることができたのですから。
その後、ダイヤは少しずつ見つかり始め、それに刺激されてさらに人が集まり、やがては新たに町ができるほどになりました。
やがてダイヤモンドの一大産地となるアフリカ。
そのきっかけを作ったのは、偶然発見された小さな光る小石でした。