初めて真珠を見つけたとき、人はどんな気持ちだったのでしょうか? 

人間と真珠の最初の出会いは、おそらく偶然、食用にとってきた貝の中から見つけたものと思われます。

こじ開けた貝の中から小さな光る粒を見つけたとき、人は何を感じたのでしょう。

おそらく海から与えられたもう一つの恵みだと思ったのではないでしょうか。

太古から、人は美しい石には不思議な力が宿ると信じ、魔除けとして身に付けてきました。

光沢をもつ真珠も、同じように人々の身体を飾ってきたと思われます。

古代では、真珠が貝から採れることは分かっていても、どうやってできるかは分かっていませんでした。

真珠が貝の中から偶然見つかるものだったころ、どうしてたくさんの貝の中のほんの一部にだけ真珠が宿るのか、不思議だったに違いがありません。

真珠はどうやってできるのかー。

これについては各地で同じような話が伝わっています。

それは、空から落ちてきた雫が口を開けた貝の中に入り真珠になる、というものです。

落ちてくるものは神々の涙だったり、雲の中で生まれた雫だったり、その土地によって様々ですが、何か特別で綺麗なものが空から落ちてきてそれを貝が呑み込む、という点で共通しています。

昔の人が真珠を見ながら思い描いたものを、じっくり考えながら眺めてみるのもいいかもしれませんね。

時代が下り、王や貴族が現れるようになると、真珠は見つけた人が身に着けられるものではなくなっていきます。

これは他の宝石も同じですが、権力者たちは自分の力を誇示するために美しい真珠を集めるようになりました。

海辺に住み、海に潜るのを得意とする人々が技能集団としてまとめられ、彼らが集めた真珠はすべて上へ献上されるようになりました。

そうして集められた真珠は加工されてアクセサリーにされたり、他国の王に献上されたり、あるいは交易品として輸出されるようになりました。

いずれにしても、真珠は一部の特権階級が自分の力を誇示するために身に着けるものとなり、到底一般人が手に入れることができるようなものではなくなったのです。

そうして、真珠が富や地位のステータスであった時代が長く続きました。

その流れを大きく変えたのが養殖真珠です。

1919年、ロンドン市場に現れた養殖真珠は、それまでの真珠産業を崩壊させるほどの威力がありました。

養殖真珠は天然では見かけないほどの大きさと形(真円)を持ち、さらに大量生産が可能だったため、真珠は値崩れを起こしました。

真珠業界から養殖真珠への批判は大きく、天然真珠こそが「本物」であり、養殖は「偽物」にすぎないとされ、排斥運動も起こりました。

裁判にもなりましたが、結局、養殖真珠は「本物の真珠」として認められ、現在流通している真珠のほとんどは養殖です。

これにより真珠の値段が下がり、真珠は一部の人間の身が手に入れられる特別な宝から、現在のように多くの人が手に入れられるものとなったのです。